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大人の科学メールマガジン No.30             平成16年1月21日
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 学研の湯本です。こんにちは。先日のメルマガ以来、メカモについてのお問い合わ
せをいただくことが増えてきました。期待されていることを肌で感じております。ス
タッフ一同、感謝しつつ、開発の追い込みにかかっております。


- Contents -
  01 -「メカモ」ヒストリー(2)
  02 -「メカモ」の機構=「リンク機構」について
  03 -「メカモ」発売日・価格決定!


【01】……………………………………………………………………………………………
  「メカモ」ヒストリー(2)
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 前回のメールマガジンでは、メカモの原型となるロボットが、故・富谷龍一さんと
東京工業大学の森正弘教授(当時・現名誉教授)の手で完成されるまでをお話いたし
ました。今回からは、それが学研で商品化に至るまでのお話をしたいと思います。

*今回はじめてお読みいただく方はぜひバックナンバーもご覧ください。
http://blue.tricorn.net/gakkennb/j.x?v=231&u=11820

 メカニカル+アニマルの造語で「メカニマル」と名づけられたこのロボットができ
たのは、昭和43年(1968年)頃でした。その後、富谷さんと森先生があるとき、NHK
教育テレビに出演された際、このメカニマルを紹介したのです。すると、放送直後か
ら、おもちゃメーカーなどから「商品化したい」という問い合わせが殺到したそうで
す。

 開発者のお二人は、当初商品として販売することは全く考えずに開発していまし
た。ところが、問い合わせが殺到したということで、「こういうものが商品として成
立するのだ」ということに意を強くされたのだそうです。ところが、開発者としては
「単なるおもちゃとして売られるのは納得できない」という気持ちが強かったそうで
す。これは、車の懸架装置(サスペンション)の研究から生まれたものであり、機構
としてはまさに「リンク機構」(後述)の教材そのものです。どうせ売るのなら、お
もちゃではなく、「教材」として売りたいという思いだったそうです。

 森先生は、当時学研の「○年の科学」の執筆者をされていました。そんなご縁で、
「一度学研に持ってってみよう」ということになり、メカニマルは、当時の学研の社
長の前でデモされることになったわけです。

 当時、学研にはトイ部門がありました(現在は別会社となっています)。結局おも
ちゃの部門ではあるのですが、ご存知の学研電子ブロックのように、トイといっても
教育的なトイを扱っていた学研でしたので、森先生のお眼鏡にもかなったのだと思い
ます。

 そのときの学研の社長は、学研の創業者でした。メカニマルのデモを見た彼は、即
座に「これは面白いから商品化しよう」と決断したそうです。ところが、それからが
大変でした。

 商品化するためには量産しなくてはなりません。見たことも無い金属のロボットを
どうやって量産するか。ここで白羽の矢が立ったのが、前回もご紹介した元学研社員
の石山さんです。

 石山さんは、大学で機械工学を学んだ後、機械設計の会社やおもちゃメーカーを経
て、当時学研に入社したばかりでした。石山さんの話によると、「機械工学をやって
たんだから、『お前やれ』という感じで仕事が突然降ってきた」のだそうです。

 機械設計やおもちゃの設計の経験はすでに豊富な石山さんでしたが、富谷さん手作
りの金属製のロボットを始めて見たときは面食らったそうです。まさに見たことも無
いもので、どうやって設計していけばいいか見当もつかない・・、そこで、石山さん
は、社命により当時相模原にあった富谷さんの研究所に研究生として入門して、この
ロボットの設計を一から学ぶことになったのです。(以下次号)


【02】……………………………………………………………………………………………
  「メカモ」の機構=「リンク機構」について
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 メカモの本質とは、「リンク機構」と言われるものが基礎となっています。これは
「クランク」と「連結バー」を様々に組み合わせていろいろな動きをさせるもので
す。

一般的なリンク機構
http://blue.tricorn.net/gakkennb/j.x?v=232&u=11820

 機械工学の世界では、これらの研究分野を機構学と呼ぶそうです。ヒストリーでご
紹介したように、そもそもメカモは、車の懸架装置(サスペンション)の研究から生
まれたものです。車のサスペンションは、車の車台と車輪をつなぐ機構ですので、ま
さに構造としてリンク機構そのものです。

 さて、リンク機構で構造物を効率よく動かすためには、力の伝わり方をうまく考え
て設計しなければなりません。昔力学で勉強した、「力点」、「支点」、「作用点」
をどのように配置して、組み合わせるかによって、全体の動きの効率の良し悪しが決
まってきます。リンク機構で一番難しいのがまさにこの点です。特に、力点をどこに
するか(どこを押すか)を決定するのが、設計上一番難しいのです。

 メカモは、これらのリンク機構を考えに考え抜いて、効率を追求した結果生まれた
構造物です。たった一つの小さなモーターの動力をギアを介してクランクや連結バー
に伝えて、回転運動から上下左右運動、振幅運動に変化させる仕組みによって全体を
複雑に動作させます。小さなモーターの動力でも、リンク機構をうまく使い、効率を
高めることにより、元の1つの動力源を最終的に10の動力源に変換することができる
のです。そのために、小さなモーターの動力で、重たい金属のボディが様々に動くこ
とになるのです。

 効率の悪い構造でこれをやると、力の伝達にロスが多くなり、モーターに一定では
なく断続的な負荷がかかります。その結果モーターの回転数が一定でなくなり、ウィ
ーン、ウィーンと唸ってしまいます。メカモは、どのシリーズも、モータのトルクが
フラットでスムーズに動きます。

 もう一つ、メカモのムダのない、効率の良い動きを象徴するのが、平行移動すると
いうことです。人間でも、体を上下に振って歩く人は歩き方が下手ですぐに疲れてし
まいます。これは効率の悪い歩きかたです。上手に歩く人の体の動きを見ると、上下
に振れずに平行移動していきます。

 たとえば、クラブ(カニ)を例にとるとわかりやすいのですが、足が動いて横に歩
く場合でも、ボディの上下動作は極力抑えられており、横に平行移動していきます。
 これは、足が地面に設置後は直線を描き、離地後は上に半円を描いてスタート地点
へ戻る、つまり足先の軌跡がカマボコの断面のような形なり、走行中の本体の上下動
を抑え、かつ障害物を足先が乗り越える動きなのです。(下記図面参照)

これは生き物カニの歩き方そのものなのです。メカモの動きの効率の良さはこのよう
なところにも現れています。

メカモ クラブ(カニ)の足の動き
http://blue.tricorn.net/gakkennb/j.x?v=233&u=11820

 ちょっと気づきにくい点ですが、こんなところがメカモのすごさなのだということ
をわかっていただけると幸いです。


【03】……………………………………………………………………………………………
  「メカモ」発売日・価格決定!
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 さて、開発も順調に進み、発売日と価格が決定いたしましたので、お知らせいたし
ます。

●平成16年4月17日発売
 クラブ(カニ) 5980円(税込)
 => http://blue.tricorn.net/gakkennb/j.x?v=234&u=11820

●平成16年5月18日発売
 センチピート(ムカデ) 7980円(税込)
 => http://blue.tricorn.net/gakkennb/j.x?v=235&u=11820

●平成16年7月17日発売
 インチワーム(シャクトリムシ) 5980円(税込)
 => http://blue.tricorn.net/gakkennb/j.x?v=236&u=11820
(写真はいずれも開発中のものです)

 何とか4月から毎月発売でお届けしたかったのですが、諸般の事情でインチワーム
のみ7月の発売となってしまいました。

 上記の予定ですので、第一弾のクラブの予約は、3月の中旬頃に行うことになると
思います。こちらも詳細決まりましたらまたご連絡を差し上げます。

次号も「メカモ」情報満載です。どうぞご期待ください。

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科学ソフト開発部教材企画開発室 湯本博文
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